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第7回ビーケーワン怪談大賞

選考結果発表(5/5頁)
★「愉しませてもらいました賞」

 「愉しませてもらいました賞」は、皆さんお決まりですか?

福澤 私は『柿をとる人』(小島モハ)です。文章もいいですが、幽霊が毛虫に刺されて「いたた」って言うあたりやラストの1行が微笑ましいですね。

 あ、マズい。私も小島モハさんだ(笑)。趣味に偏して『怪獣図鑑』を「愉しませてもらいました賞」にしようかなと思っていましたが……ちょっと再考しますね。

加門 私は『冥福を祈る』(小瀬朧)にします。ストレートな話なんだけど、怖いっちゃあ、怖いんですよ。葬式の夢を見るんだけど、それが「知らない、若いニーチャン」っていうオチが、逆にリアリティを感じます。

 『九十八円』の人ですね。

加門 生活感があって、そのなかでちょっと怖い話が出てくるところが、この人の作品は面白い。でも、『九十八円』だと、民俗学的な動物怪異をベースにした『ハルビンの猫』とかぶるので。『ハルビンの猫』が佳作に入るんだったら、『冥福を祈る』でいきます。

 私は白縫いさやさんの『東の眠らない国』を特別賞にします。小泉八雲幻想というのか、はるけさの感覚がある優れた作品だと思います。
 これですべての賞が決定しました。お疲れさまでした。


★選考を終えて


 今年の選考を終えての感想を、それぞれお願いします。

加門 今年はたいへんな接戦でしたね。昨年があっさりと決まったので、今年もそうなるかなと思ったんですが、よく言えば実力が拮抗している、悪く言えばずば抜けたものながかった。どちらかはわかりませんが。難しかったです。

福澤 上位は大接戦でしたから、入賞を逃した方も落胆しないで欲しいですね。

加門 そうそう。佳作になったもので、私が選んでいなくても、次点には選んでいたり。20選、50選、次点の違いがどこにあるかというと、自分の中でも曖昧です。読んだ順番や、そのときの気分に左右されちゃった部分があるとしたら申し訳ないなあ、と思うくらい。
 ただ、今回、大賞、優秀賞の3作が、テイストの違う作品になったのは、怪談というものの幅を知っていただくためには良かったのかなと思いますね。

 今年は怒らずに済みましたか!?(笑)

加門 疲れました(笑)。悩み疲れたというところはありましたね。でも、怒ったということで言えば、まだまだ人に読ませることを考えていない独りよがりな作品が多い。来年からは「いちばんダメで賞」も出したいかな、と(笑)。

 ……と、暴走する加門七海選考委員!

加門 これだけは許せない、みたいな作品を上げて、さらす(笑)。

 こ、怖え~。

加門 逆に言うと、それだけ真剣に読んでいるんだから。

 いいこと言った! 福澤さんはいかがでしたか?

福澤 最初にも似たようなことを言いましたが、これをほんとうに読ませたいんですか? と、聞きたくなる作品がけっこうあります。「これしか書きたくない」というのはわかりますけど、それを毎回我々が読んで、結果は毎回おなじになっちゃう。
 内容もさることながら、話に引き込むのも技術だと思うんです。物書きを商売でやっている人間は、パッと見ただけで、ある程度、作品の良し悪しがわかるんですよ。うまい人は漢字と仮名の使い分けにこだわりがあるから、視覚的なバランスがとれているんですね。書き出しにも読みやすさへの配慮があるから、すっと話に入っていける。
 反対に下手な人は奇をてらったり、難しい漢字を羅列したりで、肝心の話がつかめない。雰囲気に酔っているような作品は、ほとんど内容が薄いんです。まずは読ませることを心がければ、おのずと内容の良し悪しも見えてくるんじゃないかと思います。

加門 選考委員の好みだけで選んでいるんじゃないかと思う人もいるかもしれないけど、そうじゃないんですよ。好みに合わなくても、これは残さないと、と思わせる作品はありますからね。

福澤 私の場合、最初に選んだのが120作くらいあったんです。そこから絞りこんでいったんですが、かなりの僅差でした。とりあえず50作は選んだけど、残りの70作と大差がついているわけじゃない。

 私のリクエストとしては、常連さんたちの新作を楽しみにしている一方で、新しい書き手にもどんどん入ってきてもらいたい。ただ、新しい方の作品を読んでいると、『てのひら怪談』をすべて読めとは言いませんが(笑)、せめて一冊くらいは読んで、過去の選評も一応見てから臨んでほしい。別に傾向と対策を立てろと言っているわけではないんですが、自分が応募するのがどういう性格の賞なのかを把握するのは基本中の基本ですからね、ぜひ実践していただきたいなと思いました。
 結果的に、大賞・優秀賞は常連組が占めましたが、とはいえ、紺さん、黒木さん、国木さん、影山さんなど、強烈な個性の新規参入組がほぼ互角の闘いを演じているのは心強いですよ。本当に今年は大接戦で、選にもれた方の中には、昨年度の入賞者もいたわけですし。そういうハイレベルの切磋琢磨の中から、黒史郎さん、勝山海百合さん、田辺青蛙さん、朱雀門出さん……『てのひら怪談』に作品が収録された方の中から作家デビューされた方も何人も出ているわけですからね。

加門 ここで入賞したことがプロデビューにつながるわけではないんだけど、でも、実力のある方がやはり残るんですね。

 それと今、お名前を挙げた皆さんが、作家デビューしたあとも変わらず、本賞に投稿してくださっているのも嬉しいですよね。なんか、お中元代わりに新作怪談を送ってきてくれるような感じで(笑)。この賞はもともとが「お祭り」ですから、踊りの輪の中に率先して飛び込んで、一緒に盛り上がることに、まず意義がある。
 その意味でも、前にも言いましたように、あまり守勢に入らず、攻めの姿勢で作品を書いてほしいなと思います。常連の方の中には、すでに完成されたスタイルを持っている方もいて、それはそれで素晴らしいことなんですけど、そこからさらに、どう拡げていくかというのが、次のステップアップの課題だと思うんですね。

加門 私はほかのお二人と違って、作者を見ないで作品を読みます。『さらばマトリョーシカ』を読んで、「あ、やっぱりヒモロギさんだ」と気づく感じですね。常連だ、新顔だ、ということは気にせず読んでいますので、東さんが仰ったように、自分で自分のタイプを決める必要はないし、また、選になかなか入れないとか、初めてだということで萎縮する必要もないと思います。

 作者名は見ていますけど、常連だから有利かというと、むしろ逆じゃないかと思いますよ。なまじ手の内を知っているだけに(笑)、かえって厳しく見ちゃいますもん。

福澤 800字という短い作品だから、よけいに個性が出る。その分「またこのパターンか」と思われがちなんですね。

 思い切って冒険をしてみることで、違う可能性が開けることもあるでしょう。応募者ひとりひとりの絶えざるチャレンジが、ひいては「てのひら怪談」全体の活性化にもつながるわけで、ぜひ来年も、果敢に挑戦していただきたいと期待しています。

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