トップ > 第7回ビーケーワン怪談大賞 選考会議レポート
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| 選考結果発表(3/5頁) | |||||||
★接戦の末に~怪談大賞の決定まで
東 3人のうち、2人以上が選んでいる作品を見ていきましょう。・『水晶橋ビルヂング』/仲町六絵 ・『美醜記』/岩里藁人 ・『さらばマトリョーシカ』/ヒモロギヒロシ ・『本家の欄間』/沙木とも子 ・『でいだら』/石居椎 ・『梨園のマネキン』/紺詠志 ・『蛾』/我妻俊樹 以上7作品ですね。それ以外に大賞に推したいものがあれば推薦してください。とくになければ、このなかから大賞を決定したいと思います。 福澤 この中からでいいと思います。順当に考えた場合、3票が集まっている『本家の欄間』・『美醜記』・『水晶橋ビルヂング』のいずれかでしょうね。ただ『水晶橋ビルヂング』はすばらしい作品なんですが、怪談としてはどうでしょう。 加門 そうですね。どうかなあ。まあ、実際のことだと考えてみれば、『水晶橋ビルヂング』は、結構な怪奇現象が起こっているのですが。 福澤 『美醜記』の岩里藁人さんは他の二作、特に『――おとす』もいい作品でした。 東 今年は充実しているなと思いました。3票以外で『でいだら』は、私しか選ばないと思ったら、福澤さんも選んでいて嬉しかったですけど。これ、ちょっと面白いですね。でも、怪談かどうかというと……。 福澤 話の構造も面白いし、表現も新鮮ですけどね。 東 800字とは思えないほど、時空の広がりを感じさせるところが凄い。 福澤 母親と娘の心理描写が非常に巧みです。場面の転換も切れ味がいいし、800字という文字数の中で、かなり高度なことをやられていると思います。 東 常連の我妻俊樹さんはどうでしょう。 加門 高め安定株で、どれもいいんですけど。 福澤 相変わらずハイレベルですが、過去の作品とくらべると微妙な感じがします。ほかの常連ではヒモロギさんの『さらばマトリョーシカ』も、いつもながらの芸を見せていただきました。今回はいくぶん怖めかな。 加門 ヒモロギさんは世界が独特なんですけど、その分、作品に慣れると飽きやすいという弱点がある。ゲームと同じで、一作目がすごく面白くて、では、と二作目をやってみたら、テンション同じなのに、つまらなく感じるという……。難しいですね。 東 となると、有力候補は『本家の欄間』か『美醜記』か……『梨園のマネキン』はどうですか? 福澤 不気味さという点では、いちばんかもしれません。「カカシ」や「セミ」といった小道具の使い方が上手いんですね。最後に不条理へ持って行くところも意表をつかれました。 加門 私も小道具の使い方が上手いと思いました。『本家の欄間』はかなり気持ち悪い。最後は少し落とし話ぽくなっているかなとも思うんですけど。『美醜記』はどうですか? 東 かなりエグいネタなんですけどね。それをエログロな話ではなく、一種宗教的といってもいいような荘厳な話にしている。狂気と醜穢の極みに顕現する崇高美みたいなところまで到達しているのは大変なものだと思います。 福澤 描写に説得力があるんです。その絵はほんとうにきれいなんだろうなあ、と思わせる。今回は下がらみの応募作がいくつかありましたが、ただグロテスクな話で終わっている印象です。その点『美醜記』は、醜を描いて美を感じさせるという極めて困難な表現に成功している。まさにタイトルどおりの世界を構築したのがすばらしいと思います。 東 あえて甲乙をつける参考に、いま名前が挙がった作者の他の作品も見てみましょうか。『本家の欄間』の沙木とも子さんは『視線』、『彼の精髄』ですね。 福澤 『視線』は、ラストのどんでん返しがよかったですね。 東 沙木さんも以前から応募してくださっている方ですが、今年の三作は一皮剥けたかな、という印象がありますね。とはいえ、岩里藁人さんの充実ぶりも目立つわけで……。 福澤 岩里さんの過去の応募作を振りかえると、その成長ぶりがめざましいですね。今回は超自然的な要素が薄い感じはありますが。 東 そうすると『美醜記』か『本家の欄間』のどちらか、でしょうか。 福澤 どちらでも異存はありません。 加門 『梨園のマネキン』は怪異的な部分を取り出すと少し弱いかな。最後のオチは偶然とも読めてしまうし。怪談的なものがはっきりと出てくるのは『本家の欄間』のほうじゃないかと思います。 東 大賞が『本家の欄間』、優秀賞の二作が『美醜記』と『梨園のマネキン』という感じですか? 加門 三人ともが候補に入れた『水晶橋ビルヂング』が落ちちゃっていいんですか? 福澤 そうですねえ。確実に優秀賞か佳作にはなる作品ですけど、これを大賞に、と思って候補に入れたわけじゃないような……そのへんはいかがでしょう。 東 そうなんですね。3人が揃って選んだからといって、必ずしも評価が飛び抜けていたわけではないということもあるわけで。 加門 ちょっと、可哀想な気もしますけど(笑)。東さんは『梨園のマネキン』はどうなんですか? 東 悪くないですよ。やや新鮮味に乏しい気がして、20作の中には入れなかったけれど、ボーダーには食い込んでいましたね。 福澤 『梨園のマネキン』の紺詠志さんは、最終候補になるのは初めてですが、すごい力量だと思います。 加門 じゃあ、『本家の欄間』、『美醜記』、『梨園のマネキン』のどれかですね。スーパーナチュラルな部分を重視すると、『本家の欄間』なんですが。 東 私は『本家の欄間』か『美醜記』であればどちらでも。『梨園のマネキン』はほんの少しですが劣るかな、という感じで。 福澤 私も『本家の欄間』か『美醜記』でいいと思いますけど、どちらか決めかねますね。 加門 個人的な好みではどうですか? 福澤 作品の傾向がまったく違うので、比較するのがむずかしいですね。タイトルを込みで考えると『美醜記』のほうが完成度が高いような……。 加門 ええ。怪異の有無を別にして、怪談特有の後味の悪さ、生理的な気持ち悪さを考えると、『美醜記』のほうが『本家の欄間』より勝っているんですよね。 福澤 たしかに『美醜記』のほうがディテールまで印象に残っています。 加門 ただ、スーパーナチュラルなことを描いているということでは『本家の欄間』なんですよ。 東 加門さんが「怪談原理主義で『本家の欄間』に!」と言えば、それで決まりですよ(笑)。 加門 また、すぐそう言う(笑)。でも、確かに怪談原理主義でいけば『本家の欄間』なんですよ。それこそ、人から怪談として聞かされたときは、『本家の欄間』のほうが怪談として成立している。でもね、『美醜記』も確かに怪談なんです。スーパーナチュラルの分量で怪談の質が決まるわけではないですから。 東 帯に短し、たすきに長しということですか。『美醜記』にはスーパーナチュラルが足りないし、『本家の欄間』はある種の怪談のパターンといえなくもない。 加門 そうですね。『本家の欄間』は、まさに「欄間」を使っているところが上手い。 東 あれって民俗学的な裏付けがちゃんとありますよね。遠野なんかでは、ザシキワラシが欄間から手を出して「おいで、おいで」をするという伝承があるじゃないですか。 うーん、しかし難しいですね。でも、いままでの話を総合すると『美醜記』のほうがやや優勢じゃないかと思いますが、いかがですか? 福澤 そう思います。汚穢を描いて美しさを表現するというのは、なかなかできることではないですよ。あえてハードルが高いことに挑戦する意欲を感じます。 加門 じゃあ、怪談の幅を広げるという意味で『美醜記』で。 東 では、今年の大賞は岩里藁人さんの『美醜記』に決定したいと思います。(拍手) |
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