トップ > 第5回ビーケーワン怪談大賞 選考会議レポート
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★惜しくも選に漏れた作品の中から
東 今回はとにかく応募作が多いので、選外となった作品の中にも捨てがたい味のあるものが多かった。そのあたりを極力、フォローしておきましょう。たとえば朱雀門出さんの『カミソリを踏む』なんか、一種の夢小説風なんだけれど、独特な臨場感があって、なんともいやーな生理的嫌悪感を掻きたてる良さがありました。 加門 私が、いやーな感じになったのは『大好きな彼女と一心同体になる方法』(料理男さん)ですね。 東 ああ、あれも秀逸でしたね。 加門 なんてイヤな男なんだ! と。 東 ああいうのって実際にあるんですか? 魂をパクリと食べちゃったりすることって? 加門 知りません(笑)。私はそのへんのリアリティよりも、話者となっている男性の心性のほうが怖かったですよ。 東 料理男さんは前回も印象的な作品を投稿されている実力派ですが、『大好きな彼女と一心同体になる方法』は、お母さんが追いかけてくるところとか、スリリングな展開で、話としてもよくできていますよね。 吉野あやさんの『蛟(みずち)』も奇天烈な話でした。夫が事故でいきなり新幹線になっちゃうという(笑)。
加門 これもねえ。入れるか入れまいか、最後まで迷いました。
福澤 内容も奇想天外ですが、タイトルはなんなんでしょう。中身と関係ない気がするんですが。 加門 吉野さんって、ほかにも電車モティーフの作品がありましたけど、「鉄子」なんですかね。 東 そうみたいですね。 向井野海絵さんの問題作『8字怪談』はどうでした? 加門 「だから、何?」と思っちゃったんですよ。もうちょっとできそうな気がする。 福澤 せっかくだから「8字」と引っかけてほしかったですね。ただ8字というだけなら、ほかの内容でもいいことになってしまうので。 東 ケセラセイラさんはいかがです? やはり、ちょっと変わった怪談を送ってくださいましたけど。 加門 『千住が原からの眺め』はきれいでしたね。 東 『琥珀色の小箱』は可笑しかった。「怪奇小説大賞」って……。「雅彦っ」で大笑いしました。 加門 あれね!(笑)。何なんだろうなあ……。雅彦、死んでるんですよね。ま、いいや。「K美」は生き残っているみたいだから(笑)。 東 そそそ、そんな利己的な! 加門 岩里藁人さんの『シャボン魂(だま)』も気になりました。シャボン玉と爆撃機の音がかぶって印象的で、面白いな、と思いましたね。 東 岩里さんも前回に較べて上達が目立つ書き手のひとりですね。 福澤 『ザクロ甘いか酸っぱいか』は非常に面白い話でしたが、怪異がないのが惜しい。『喰うか、喰われるか』も寓話風でよかったです。 加門 今回、読んで思ったんですが、黒史郎さんは長篇向きなんだろうな、と。 福澤 『蛾鬼』と『夜闇の祭囃子』はどちらもうまいんですけど、田辺さんと同じで、黒さんならもっと書ける! と思いましたので。やっぱり実力を知っている方には、点数が辛くなりますね。 加門 勝山海百合さんは『古井戸』が印象的でしたね。でも、彼女ももっと長いもののほうが向いているかもしれない。 夢乃鳥子さんはもしかすると、怪談よりもファンタジーのほうが嗜好に合っているのかもしれないですね。話の運びなんかはお上手だけれど。 福澤 勝山さんは安定した実力ですね。『古井戸』は、井戸で名前を呼ぶという風習が面白い。ラストの2行が冴えています。 とちみさんの『分割払い』は着想がユニークでした。ユーモラスな雰囲気がラストで一転して不気味になるのもいい。圓眞美さんの『からくり』も面白かった。押入れから足が出てくるっていうのが、怖いけれども官能的な味わいがある。 東 ああ、あれはちょっと面白かったですね。 あとは都田万葉さん。『未練の檻』とか『家系を織る』とか。静謐なジャパネスクのテイストに、とても好感を抱きました。 福澤 『未練の檻』は文章も美しくて、完成度は高いですね。 山本ゆうじさんもよかった。『蚊帳の外』は最後までどうするべきか迷いました。ただ追加でお送りになられたラストの文はいらないと思います。現状のままのほうがいい。同じく山本さんの『地獄絵――ぢごくゑ』も印象に残りました。 東 山本さんも達者な書き手ですね。やや器用貧乏になりかねない面もありますが……。 福澤 ほんとうにうまい方だと思います。しっかりした文体で、描写にむだがない。 加門 私は血砂糖さんの『魅惑の芳香』が気持ち悪かったですね。 福澤 『魅惑の芳香』は個人的な好みでいうと、伝聞調にしたほうが怖さを出せた気がします。 あ、あと湯菜岸時也さんもいいですね。『赤牛』はきれいにまとまっているんですけど、『怪鳥』は、ヤクザ風の男が怪異の核になっているのが面白い。 加門 福澤さんが好きそうな(笑)。 福澤 タイトルからすると男たちは鳥だったのでしょうか。なんとも不思議な話です。 |
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