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第5回ビーケーワン怪談大賞

選考結果発表(9/10頁)
★惜しくも選に漏れた作品の中から 

 今回はとにかく応募作が多いので、選外となった作品の中にも捨てがたい味のあるものが多かった。そのあたりを極力、フォローしておきましょう。たとえば朱雀門出さんの『カミソリを踏む』なんか、一種の夢小説風なんだけれど、独特な臨場感があって、なんともいやーな生理的嫌悪感を掻きたてる良さがありました。

加門 私が、いやーな感じになったのは『大好きな彼女と一心同体になる方法』(料理男さん)ですね。

 ああ、あれも秀逸でしたね。

加門 なんてイヤな男なんだ! と。

 ああいうのって実際にあるんですか? 魂をパクリと食べちゃったりすることって?

加門 知りません(笑)。私はそのへんのリアリティよりも、話者となっている男性の心性のほうが怖かったですよ。

 料理男さんは前回も印象的な作品を投稿されている実力派ですが、『大好きな彼女と一心同体になる方法』は、お母さんが追いかけてくるところとか、スリリングな展開で、話としてもよくできていますよね。  吉野あやさんの『蛟(みずち)』も奇天烈な話でした。夫が事故でいきなり新幹線になっちゃうという(笑)。

加門 これもねえ。入れるか入れまいか、最後まで迷いました。

福澤 内容も奇想天外ですが、タイトルはなんなんでしょう。中身と関係ない気がするんですが。

加門 吉野さんって、ほかにも電車モティーフの作品がありましたけど、「鉄子」なんですかね。

 そうみたいですね。  向井野海絵さんの問題作『8字怪談』はどうでした?

加門 「だから、何?」と思っちゃったんですよ。もうちょっとできそうな気がする。

福澤 せっかくだから「8字」と引っかけてほしかったですね。ただ8字というだけなら、ほかの内容でもいいことになってしまうので。

 ケセラセイラさんはいかがです? やはり、ちょっと変わった怪談を送ってくださいましたけど。

加門 『千住が原からの眺め』はきれいでしたね。

 『琥珀色の小箱』は可笑しかった。「怪奇小説大賞」って……。「雅彦っ」で大笑いしました。

加門 あれね!(笑)。何なんだろうなあ……。雅彦、死んでるんですよね。ま、いいや。「K美」は生き残っているみたいだから(笑)。

 そそそ、そんな利己的な!

加門 岩里藁人さんの『シャボン魂(だま)』も気になりました。シャボン玉と爆撃機の音がかぶって印象的で、面白いな、と思いましたね。

 岩里さんも前回に較べて上達が目立つ書き手のひとりですね。

福澤 『ザクロ甘いか酸っぱいか』は非常に面白い話でしたが、怪異がないのが惜しい。『喰うか、喰われるか』も寓話風でよかったです。

加門 今回、読んで思ったんですが、黒史郎さんは長篇向きなんだろうな、と。

福澤 『蛾鬼』『夜闇の祭囃子』はどちらもうまいんですけど、田辺さんと同じで、黒さんならもっと書ける! と思いましたので。やっぱり実力を知っている方には、点数が辛くなりますね。

加門 勝山海百合さんは『古井戸』が印象的でしたね。でも、彼女ももっと長いもののほうが向いているかもしれない。
 夢乃鳥子さんはもしかすると、怪談よりもファンタジーのほうが嗜好に合っているのかもしれないですね。話の運びなんかはお上手だけれど。

福澤 勝山さんは安定した実力ですね。『古井戸』は、井戸で名前を呼ぶという風習が面白い。ラストの2行が冴えています。  とちみさんの『分割払い』は着想がユニークでした。ユーモラスな雰囲気がラストで一転して不気味になるのもいい。圓眞美さんの『からくり』も面白かった。押入れから足が出てくるっていうのが、怖いけれども官能的な味わいがある。

 ああ、あれはちょっと面白かったですね。  あとは都田万葉さん。『未練の檻』とか『家系を織る』とか。静謐なジャパネスクのテイストに、とても好感を抱きました。

福澤 『未練の檻』は文章も美しくて、完成度は高いですね。  山本ゆうじさんもよかった。『蚊帳の外』は最後までどうするべきか迷いました。ただ追加でお送りになられたラストの文はいらないと思います。現状のままのほうがいい。同じく山本さんの『地獄絵――ぢごくゑ』も印象に残りました。

 山本さんも達者な書き手ですね。やや器用貧乏になりかねない面もありますが……。

福澤 ほんとうにうまい方だと思います。しっかりした文体で、描写にむだがない。

加門 私は血砂糖さんの『魅惑の芳香』が気持ち悪かったですね。

福澤 『魅惑の芳香』は個人的な好みでいうと、伝聞調にしたほうが怖さを出せた気がします。 あ、あと湯菜岸時也さんもいいですね。『赤牛』はきれいにまとまっているんですけど、『怪鳥』は、ヤクザ風の男が怪異の核になっているのが面白い。

加門 福澤さんが好きそうな(笑)。

福澤 タイトルからすると男たちは鳥だったのでしょうか。なんとも不思議な話です。
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